面接の技法 その1 面接をする側の根本的な問題は何か?

採用した人材が定着しない、活躍できない。

企業によって、その理由はさまざまあります。

ただ、そもそも採用面接で「企業に合った人」を選べているでしょうか?

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面接官は面接の素人だ

採用担当者や人事担当者、人事の責任者から部門責任者や役員まで。

実際に面接をする人は多岐に渡ります。

しかしながら「面接が上手だ」という人は数えるほどしかいません。

それはなぜなのでしょうか。

管理人は管理部門として、あるいは部署の責任者として、10社ほどの企業で20年近く採用面接を行ってきました。

企業によっては、自分より上位の役職者と一緒に面接に入ることも多々ありました。

その中で繰り返し思ったのは

「面接官はみんな面接が下手だ」

ということです。

下手だというのが言い過ぎであれば、

「面接官はおおむね全員が面接の素人である」

という言い方でもいいでしょう。

これは企業にとって由々しき問題です。

例えばずぶの素人が何も知らないまま資材の購買を行う、入ったばかりの社員が先輩に何も教えてもらえないまま営業に行く、といったことがありえるでしょうか?

ところが恐ろしいことに、採用面接ではこれが常態化しているのです。

「何も知らないまま」「何も教えてもらえないまま」とお伝えしましたが、採用面接がうまくいかない(採用した人が活躍しない・定着しない)根本的な理由はここにあります。

まず最初の問題として、面接官が

「どういう人を採用すればいいのか、具体的に分かっていない」

のです。

 

問題「採用ターゲットが明確ではない」

管理人は10社以上で採用面接を行ってきましたが、事前に上司や役員から「こういう性格・考え方の人を採ってほしい」と明確に言われたことは一度しかありませんでした。

 とはいえ「どういった人が欲しいか」分からないまま採用するということは、

「面接担当者とウマが合えば採用に至る」

といったことになりかねません。

他部署、例えばIOT担当者が

「自分が好きなパソコンを全社に導入する」

などということがあるでしょうか?

そんなことは恐ろしくてできないので、こちらから「どういう人がほしいのか?」と訊くと、判で押したように返ってくる答えがあります。

それは

「いい人を採ってほしい」

というものです。

とはいえ「悪い人」「ダメな人」を採りたいという企業はありません。

そうであるならば、「いい人」とは何でしょうか?

 本来であれば「いい人」という基準は企業によっても部署によっても、あるいは役職やその会社がマクロで見た時にどういった状況にあるかによっても変わってくるはずなのです。

 「今回はとにかく事務員補充なので真面目でしっかりした人がほしい。多少融通が効かなくても構わん」

なのか

「ウチは小さい会社だから、多少大雑把でも円滑なコミュニケーションが取れないと困る。」

なのか、採用基準は全然違うのですが、これらがひっくるめて

「いい人」

という漠然とした言葉で括られてしまうわけです。

こんなざっくりしたイメージで、「いい人」が取れるはずはありません。

 

「いい人」という漠然としたイメージ

とはいえ面接官は採用をする・しない(あるいは次のステップに進んでもらう・もらわない)を判断しなければならない。

ではどのように「いい人」かどうかを判断するかというと

「自分がいい人だと思ったら会社にとってもいい人である」

という、非常に安直な判断を下してしまうわけです。

そうなると当然、「いい人だ」と思ったら一次面接は通過してしまうわけで、さらには上司や経営者すら「いい人」に対する具体的なイメージがない以上、企業に合うかどうかではなく

「いい人そうだから採用」

という、わけのわからない判断に至ってしまうわけです。

 言い方を変えれば

「採用ターゲットのイメージが社内で共通化されていなければ、その企業にとっての『いい人』は採用できない」

と言えるでしょう。

それはそうです。

 恋愛で言えば

「誰でもいいから、いいと付き合いたい」

と言われても周囲もどんな人を紹介してあげればいいのか困りますし、相手だって

「誰でもいいなら私じゃなくても…」

という思いになってしまうのは想像に難くありません。

採用も同様。

「いい人」を採用したいのであれば、まずは自社にとっての「いい人」像を設定し、それを社内、最低でも採用面接を行う人たちの間ぐらいではすり合わせておく必要があるわけです。

 

ターゲットが明確化されていれば採用はうまく行くのか?

もちろん、ある程度の規模の企業になると、採用ターゲットは設定されていることが多いです。

管理人自身が在籍した企業でも、ターゲットをしっかり伝えたもらった経験があります

(一社だけでしたが)し、自分が面接を受けて

「この会社は採用ターゲット像が明確だな」

と思うこともあります。

しかし採用が上手くいかないのは

「自社にとっての『いい人』が漠然としている」

からだけではありません。

自社にはどういう人を採用すればいいのかイメージができ、それを共有できていれば具体的な「いい人」の採用に繋がり、その人が定着する。

そう簡単にいけばいいのですが、それだけで解決するほど採用の問題は甘いものではないのが実情であることは、ターゲットが明確であっても採用に苦慮している企業があることからも容易に想像できます。

採用面接の問題はもう一つ。

 面接官が、テクニカルな面で

「面接の仕方を知らない」

点にもあるのです。

(続く)