「上位集団」または「下位集団」に合わせてルールを作る。
これは集団ではありがちなのですが、どちらもうまくワークしません。
その理由は「人間の心理」にあるようです。
下位1割に合わせてルールを作るとどうなるか
よく「2割・6割・2割の法則」などと言われます。
集団では上位2割が牽引し、6割が普通に仕事をし、足を引っ張る2割がいる、という法則です。
デヴィッド・シロタらの著書「熱狂する社員」の中にあったのだ思いますが、
- どんな職場でも、下位5パーセントはダメ社員である
- その5パーセントに合わせてルールを決めるから、全員がやる気をなくす
という話もあります。
2割か5パーセントかは集団によっても異なるでしょうし、そもそも「ダメ社員とは何か」という定義も曖昧ではあります。
しかしながら、管理人自身も「協調性が低い従業員ひとりを改善するために動いたら、かえってチームをぎこちなくしてしまった」という経験があります。
少なくとも集団の利益に貢献しない従業員はどこにでも存在すること、その人たちに合わせて愚かなルールを作ってしまうと集団のやる気が削がれることは間違いがなさそうです。
愚かなルールが会社をダメにする
例えばほとんどの人たちがちゃんと仕事をしているのに、
「山田と田中はいつも喫煙室でサボっている!」
といって山田と田中向けを取り締まるためだけに「休憩時間外の喫煙は禁止」というようなルールを作ってしまうことです。
これでは仕事は一生懸命やりながらたまにタバコも吸う、という一般的な喫煙者従業員がやる気をなくすのは明白です。
こういったケースは大なり小なりどこにでも見受けられます。
管理する側が「集団全体の能力をあげること」よりも「ルールを守らない人間を取り締まること」に血道を上げてしまうのです。
これでは生産性など上がるはずもありませんし、管理側と被管理側の関係もよくなるはずがありません。
極端なことを言えば、「トイレットペーパーは15センチまで」といったような愚かなルールを作れば、それだけ従業員のロイヤリティは下がります。
最終的には「トイレットペーパーは15センチまでと書いてあるのにその長さが守れない」というような従業員しか在籍しなくなってしまいます。
最終的には中位は下位にシンパシーを感じる
このように管理する側が「集団全体の能力をあげること」よりも「ルールを守らない人間を取り締まること」に血道を上げてしまうことが「下位1割に合わせたルールはうまくいかない」という理由ですが、それだけではありません。
下位1割に合わせたルールがうまういかない理由としてもう一つ挙げられるのが、「最終的には、中位の人間は下位の人間に対してシンパシーを感じる」ということです。
人間は完璧な人よりも、ダメな人に親和します。
「仕事ができて厳しいあの人」よりも「仕事はできないが話しやすいあいつ」や「文句は言うが面と向かって俺に文句は言わない彼女」の方が共感できるわけです。
もちろん普段それまでは
「山田さんはいつもタバコ休憩して仕事なんか全然しないんだから!」
「佐藤係長ってホントに仕事できないわね〜」
「鈴木くんって、よく人の文句言うよなぁ」
と言っていても、いざ「タバコ休憩は禁止」「仕事ができない奴は減給」「当人に対する苦情は全て人事部に言うこと」というようなルールを作ってしまうと
「あまり厳しいとかわいそうだ」
といった声が出てくるものです。
「次は自分なのではないか」という不安
中位の従業員にあるのは
「次は自分が取り締まられるのではないか」
「下位の従業員から切り捨てられるのではないか」
と言う不安です。
これがダメ従業員を擁護させ、厳格なルールを陳腐なものにしてしまうのです。
結果的に「みんなのために」「良かれと思って」ルールを作った上位1割が敵対視されることになります。
ルールを作る際に「ダメな人を取り締まってやろう」というスタンスを持つことはよくありません。
そうではなく「少しでも集団を機能させるにはどうすれば良いか」と言う視点を持つことが大切でしょう。
いつまでも下位1割に合わせていては生産性も上がりませんし士気も下がる。
何より「9割を無視して1割に合わせる」というのは戦略上好ましくありません。
9割の従業員がモチベーションを上げることができるルール作りを心がけたいものです。
それでは今日はこの辺で。
明日は「研修は参加型にすべし」を予定しています。