喫煙者閉め出しは「差別」ではない

 

喫煙者を採用しない企業が増えている

こんばんは。SMEです。

少し前に「喫煙者不採用の動きが増えている」というニュースを見ました。

headlines.yahoo.co.jp

現代の日本において喫煙率はどんどん下がっています。

JTの調査によれば、昭和41年には83.7%あった成人男性の喫煙率が、平成30年現在では27.8%まで低下しているそうです。

ピーク時に比べると喫煙者の数と非喫煙者の数が、ほぼ逆転しているわけです。

  

企業側からすれば、従業員が喫煙をすることのメリットは考えにくいのに対し、デメリットはいくつも挙げられます。

  • 火災の心配がある
  • 喫煙スペースの確保と管理コストが発生する
  • 清掃コストが発生する
  • 喫煙者が就業中にタバコ休憩を取り、生産性が下がる
  • それを見た非喫煙者が「喫煙者だけタバコで席を外すのはズルい」と言い出し、軋轢が生まれる

……などです。

 

喫煙人口が激減し、また企業のコスト意識が高まる中、

「喫煙者は採用しない」

という選択をする企業が増えてくるのは当然のことでしょう。

 

 

中小企業の「喫煙」実情

管理人は数社の中小企業を渡り歩き、また取引先でも喫煙所があると意識的に覗き込んできました(失礼)

その範囲に限って言えば、

「作業スペースから喫煙所まで遠い企業ほど、一般従業員の就業意識レベルが高い」

と感じます。

タスクをこなすべき一般職レベルの従業員が、喫煙所が近くにあればあるほどタバコ休憩で席を外すのです。

具体的に言えば、建物内に喫煙所がある企業の喫煙所では、気が付くと誰かが喫煙している状態。

これが社外喫煙所(駐車場の隅など)になるとタバコを吸いに行く回数がぐっと減り、敷地内に喫煙スペースが全くない(どこかに行かないとタバコが吸えない)となると休憩時間までほとんど誰もタバコ休憩に立たない、というのが実感です。

「うちの従業員はタバコ休憩が多い」とお悩みの経営職の方は、思い切って喫煙所を遠くに設置することをお勧めします。

 

 

元・喫煙者として

実は管理人自身も、10年近く前までは喫煙者でした。

タバコをやめるのには大変な苦労をしましたし、いまだに時々

「卒煙に失敗してタバコを吸ってしまった」

という夢を見ます。

なかなかタバコをやめられないという気持ちはよく分かります。

また「喫煙所でしか聞けない話」というのは確かにあります。

ついついグチをこぼし合ったり、ここだけの話をするなどガードが下がるものです。

タバコを吸いながら議論はできても、ケンカはしにくい。

「まぁ一服しましょうや」

とタバコを吸いながら話せば、確かに空気は変わります。

喫煙者同士が部署の枠を越えて話ができたり、あるいは雑居ビルでは他社の方と交流が生まれたりすることがあるのは確かです。

 

企業にとって、喫煙を容認するか・しないかというのは経営方針の問題です。

時代の流れとは言え、全面禁煙のデメリットの方が大きい企業もあるでしょう。

管理人も、ヒステリックに「どこも全面禁煙にすべき」とは言いません。

喫煙者はマナーを守ってタバコを楽しんでいただければいいと思います。

 しかしながら、そんな管理人でも記事内にある

「喫煙者不採用は差別だ」

という言葉には首を傾げざるを得ません。

 

 

「差別」とは何か?

差別という言葉を調べると、

「特定個人・集団に対して理由もなく不当・不利益な取り扱いをすること」

とあります。

しかしながら、

「では何が理由であり、何が理由でないのか?」

「何が不当・不利益か?」

と考えると、差別という概念はどんどん抽象化してしまいます。

そのため管理人は、「差別」とは

  • 自分の努力では変えられないことで
  • 所属集団において同一の待遇が受けられなくなる

ことであると考えています。

 

黄色人種であることやモンゴロイドであることは、自分の努力ではどうにもなりません。

性差別も同様ですし、容姿に対するもの、また生まれ育った文化に対するものも同様でしょう。

職業差別や学歴差別は「本人がそれ(学校や職業)を選んだからだ」と思うかもしれませんが、過去を変えることはできません。

アプリオリなもので、所属集団から不当に評価されるのが「差別」だと管理人は考えています。

 

 

喫煙者不採用は「マッチング」

翻って喫煙はどうでしょうか。

タバコを吸うか吸わないかはそもそも個人の自由な判断に委ねられていますし、その後で喫煙を続けるかどうかも自由です。

何より、企業が「うちはタバコを吸う人は採用しませんよ」とオープンにしているのであれば、応募者には

「それであれば私は貴社には応募しません」

「貴社に入社したいのでタバコをやめます」

という選択肢が存在します。

 企業で採用をしている管理人からすると

「タバコはやめたくないがお宅には入社したい。喫煙者を採用しないのは差別だ」

というのは違和感を感じます。

これが差別となると「経営理念には賛同しないが入社させろ。断ったら差別だ」というところまでフォローしなければならなくなります。

 「いや俺は頑張ったけどタバコがやめられないんだ。」

というのであればそれはアディクトですので、まずは禁煙外来に行くことをお勧めします(本当にタバコをやめる気があるのであれば)

 企業としては

「うちはタバコを吸わないという選択をした人に入社してほしい」

という意思を表明しているわけです。

「喫煙した過去があるやつは採用しない」と言っているわけではありません。

あとは応募者がそれを受け入れるか(企業の意思表示と応募者の希望がマッチングするか)どうかの話です。

 

 

社会としての課題と、会社としての課題は異なる

もちろん、すでに喫煙者として入社していた人達に対して

「明日からタバコをやめろ。

なら会社を辞めろ

と言うのは無理があります。

 

緩やかに、例えば

  • タバコ休憩を禁止する
  • 卒煙できるよう禁煙外来への通院に補助を出す

などの対応が必要になるでしょう。

 

また、「会社の意向は分かるが喫煙はやめたくない」という人に対して不利益な取り扱いがなされることは避けるべきです。

「入社時点では喫煙者でも入社できた」という過去は、当人が努力して変えられるものではありません。

この点を押さえた対応をしないと、突然ルールが変わったことによる差別が生まれてしまいかねません。

 

企業によって対応方法は異なるでしょうが、

「これからは喫煙者を採用しない」

という問題と

「既存の喫煙者をどうするか」

を一緒にして考えることには無理があります。

 

「喫煙者を採用しない企業が当たり前になったときに、喫煙者はどこに向かうのか」

という課題が残されていることは事実です。

しかしながら、少なくとも今の社会において個々の企業が採用条件に「非喫煙者であること」を掲げるのは、差別ではなく応募者が選択できることだと言えるでしょう。