こんばんは。SMEです。
みなさん、「文学」読んでますか?
「文学なんて読んだって1円にもならない」と考える方は、ビジネスの現場で何かを失っている可能性がありますよ。
夏目漱石をめぐるエピソード
ちょっと前にお話をしたある企業の社長さんは50歳手前ぐらいでしたが、その方に
「SMEさんはどんな本を読むの?」
と尋ねられ、管理人は
「漱石は好きですねぇ。全部、何回も読み直してます」
と答えたわけです。
管理人としては
「漱石か、ベタだな」
といった反応を想定していたんですが、その社長さん(自身かなりの読書家)はちょっと驚いたような顔をして
「へー、それはね、俺らの世代には分からない感覚だわ」
と言ったわけです。
ビジネスパーソン今昔
その時は何だか腑に落ちなかったのですが、つい先日もこのブログでご紹介した「劣化するオッサン社会の処方箋」を読んで、
「なるほど! そういうことか!」
と膝を打ちました。
ざっくり言いますと、1970年前後までは「教養主義」が学生の間では普通であり、教養書を読むのは「普通」のことでした。
ところがその後20年ほど、学生が全くと言っていいほど本を読まない「知的真空」の時代があった。
そして今の20代〜30代は教養書ではなく、手っ取り早く役立つ経営学などの「実学」を身につけるようになった、ということが書いてあります。
教養世代→知的真空世代→実学世代、と著者は書いていますが、これはまさに管理人のもやもやを解消してくれる発見でした。
以前働いていた会社などでも、1970年頃に生まれた上司や経営職で全く本を読んでいない人が多いのです。
逆に管理人と同世代かちょっと下、1980年以降の同輩や部下は「情報」としての読書をして資格を身につけたり、問題を解決したり、キャリアアップを図ったり、つまり「目的達成のための手段として本を読む」という人が多数でした。
(管理人の周囲の、かつ傾向としての話ではあります)
文学は「知識」ではなく「知恵」を得るためのものである
確かに文学を読むことで、何か直接的に利益が生まれるわけではありません。
MBAを取得する役に立つわけでもなければ、お金が儲かるわけでもない。
よほど特殊な環境でもない限り、社内で社長に
「田中くん、漱石の全集買ったんだって? いいなぁ」
などという話になることもないでしょう。
お金も儲からなければコミュニケーションの役にも立たない。
ビジネスパーソンとして、文学書や思想書を読むことで得られる直接的なメリットは何もないわけです。
しかし、
- 当然のようにあるていどの文学書を読み高度経済成長を支えてきた「教養世代」
- 「本なんか読んでも無駄だ。お金を稼ぐにはもっといい方法がある」と考える「知的真空世代」(しかしすごい名称だな)
- 実利のために読書をする「実学世代」
と比べてみると、管理人が接してきた限りではやはり、教養世代のビジネスパーソンとしての守備範囲の広さ・深さは突出しています。
MBAを取り大手コンサルでバリバリ仕事をしている実学世代と話しても、たじたじになって「凄い人だな」と思うことはあっても、「こういう人になりたい」とは思いません(管理人は)。
しかし60代以降の経営者や顧問クラスの方などとお話しすると、
「俺はいつかこのように深い人間になれるだろうか?」
と暗澹たる気持ちになることがあります。
管理人の父母や義父・おじおばもこの世代に属していますが、大体の人がいまだに当たり前のように活字を読んでいます。
つまり、活字に親しんできた世代は「深さ」を携えているのです。
それはなぜかと言うと、文学書や思想書が一時的な「知識」ではなく、生きていく上での「知恵」を教えてくれるためであろうと管理人は考えます。
文学は「壊れない知恵」だ
先日、もう何十回、ひょっとしたら何百回目になるか分からないほど読んだ「坊ちゃん」を読み返しました。
そうしたところ、若い頃には気にならなかったこんな言葉に胸を打たれたのです。
人は好ききらいで働くものだ。論法で働くものじゃない。
確かに、と管理人は頭を垂れました。
年をとって、若い頃には分からなかった意味に気づいたり、見過ごしていた言葉を深く理解できるようになる。
それは悪いことではありません。
文学とは「壊れない知恵」であると管理人は思います。
100年以上読まれてきた小説が意味をなさなくなるということは考えられません。
インターネットで得られる「知識」や、ベストセラーで得られる「情報」の中には、3年経ったら役に立たないものも、それどころか1年後には陳腐化していることもあるはずです。
読み継がれてきた文学書や思想書は時が経っても「壊れない」のです。
そして、単純な知識・情報ではなく、生きていく上での知恵に溢れています。
今すぐには役に立たなくても、ビジネスパーソンとして成長する上で文学はきっと役立ちます。
ぜひ、時間を作って本を読んでいただきたいと切に願います。
では今日はこの辺で。
明日は「地方物流企業が生き残るには?」を予定しています。