中小企業こそダイバーシティを! 2 従業員の「変化」

こんばんは。SMEです。

さて、中小企業とダイバーシティについて考える二日目です。

 

 

雇用をとりまく状況

管理人が改めて書くまでもありませんが、これから日本は少子高齢化がどんどこ進みます。

となると経済は先細りすることになります。

それを避けるには

  1. シンガポールのように企業活動に特化した国家を作る
  2. 移民をばんばか受け入れる

のどちらかしかないと思いますが、まぁどちらも現実的ではないでしょう。

もちろん一番いいのは日本の少子高齢化が解決し出生率が上がることですが、これは更に難しいと思われます。

 

高度経済成長期と違い、現代は「主婦が家庭にいられる」時代ではありません。

共稼ぎをしないと生活が厳しい、だから子供を二人以上産めない、産めないから少子高齢化が進む、少子高齢化が進むから経済が停滞する、経済が停滞するから子供を二人以上産めない、という悪循環になるわけです。

 

ところがこの辺が、地方の中小企業経営者や役員、あるいは人事の部長クラスの方にはよく分かっていないように思われます。

 

 

経営層と従業員の意識のズレ

なぜかというと、地方中小企業の経営層やら部長レベルというのは基本的に、奥さんが「生活のために」働いていないことが多いからです。

これは従業員が親の介護をするときにも意識のズレに繋がります。

つまり、経営層は子育てや介護を奥さんに頼めるわけです。

いやもちろん、

「何であたしがあんたの親の面倒を見なきゃいけないのよ!」

と断られる可能性はありますが、そうなったら

お金で解決する(ヘルパーを頼んだり施設に入れたりする)

という方法も残されています。

(※ダイバーシティの話をしているのに「奥さん」という表現が気になる方もいるかもしれませんが、他に適切な言葉が見当たらないのでご容赦ください)

 

しかし地方在住で例えば40代で年収が460万円、家のローンを組んで車が二台、奥さんは朝9時から夕方までパート、という家庭では、奥さん一人に親の介護をしてもらうわけにはいかない。

かと言ってお金でまるっと解決もできない。

そんなことをしたら生活が破綻するわけです。

とはいえ男性社員が

「親の介護があるんで残業せずに帰らせてくれ」

と言ったら、年輩の上級管理職や経営職は

「(そんなこと、奥さんに頼めよ!お前、会社員だろ!)」

と心の中で思ってしまうのです。

子育てにしても同じ。

子供が熱を出した、という時に必ずしも奥さんが家にいるわけではありません。

場合によっては男性だろうが正社員だろうが休まざるを得ないのですが、やはりここでも

「(そんなこと、奥さんに頼めよ!お前、会社員だろ!)」

と思われてしまう。

この辺りが、従業員と経営層における意識の大きなギャップになっていくのです。

 

確かに30年ほど前、それこそ中小企業で経営職を務める、2018年現在で60歳前後の方々がミドルマネジメントをしていた1980年頃

「夫が一人で家族四人を養い、妻は家事に専念する」

という働き方は、当たり前でした。

しかし今やよほどの大手・一部上場企業あるいは一握りのベンチャー企業を除き、課長レベル以下ともなれば、奥さんが完全な専業主婦」という家庭を探すのは難しいのではないでしょうか。

インセンティブがつかない一般事務職や、コーポレートスタッフともなれば尚更です。

管理人も岡山では年齢の割に貰っている方だと思いますが、それでももし妻が全くパートをしないとなると、家のローンをどうやって返そうかと頭を抱えてしまいます。

 

 

ライフスタイルの多様化

この辺りからいよいよダイバーシティの話に深くリンクしていきますが、今は男性が付き合いや残業で夜遅く帰ってきてもご飯ができていて風呂も沸いていてあとは寝るだけ、ごくらくごくらく、という時代ではないのです。

むしろ夫が家に帰っても真っ暗で、ケータイを見ると奥さんから「今日は残業で遅くなります」というチャットが来ていて、えー? じゃあ今日は俺が晩メシ作るのか、勘弁してくれよ。風呂も掃除しなきゃな、明日も早いのによう、じごくじごく、というのが当たり前になってきているわけです。

 

つい30年ぐらい前までは、「男性会社員は残業して、呑んで帰るのが当たり前」という時代が確かにありました。

しかし今やそれは当たり前でも何でもなくなっています。

家に帰って親の介護をしなければいけない人もいれば、奥さんの方が帰りが遅い場合もある。

あるいは男性同士のカップルで暮らしていてパートナーの方が帰りが遅いから家事をしなければいけない、というケースもあるかもしれませんし、シングルで子育てをしている場合もあるでしょう。

また、そもそも結婚しない人も増えています。

そこで

「男がダメなら、じゃあ、女性を増やすか」

と単純に考えても、女性も状況は変わりません。

 

それでは共働きでもなく、親の介護もしていない若手従業員にガッツリ働いてもらう、というのはどうでしょうか。

それでは一部の従業員、例えば「親元で生活している未婚の従業員」にだけ業務負担が偏ってしまうことになりかねません。

更に、少なくとも日本企業の報酬体系では、いくら働いてもミドルよりも若手の方が年収が高くなることはまずありません。

その結果どうなるかというと、不公平感を感じた従業員の離職を招くわけです。

 

ドルマネージャー以下の、これから会社を背負って立つ人たちのライフスタイルが変わっていることにトップマネジメントが気付いていない。

「仕事よりプライベートを大切にしている」

と単純に考え、従業員のワークライフバランスが崩れると「生活」が成り立たないレベルにあることが理解できない。

この辺りに、経営層とそれ以下の意識のズレがあるわけです。

かと言って、そういった経営者が事業を譲渡するのは往々にして自分の子供です。

つまり、たとえ年齢が若かろうが、「母親(妻)は家にいるもの」というのが当たり前の状態で育った人々が経営層になるわけです。

これでは思考など変わるわけがありません。

 

確かに、給料というのは「業界の相場」「社内でのバランス」によって決まるところが大きいものです。

「ウチは、社員が一人で家族を養えるかどうかを基準に給料を決めています」

などという企業は見たことも聞いたこともありません。

企業としては「この給与でやっていけないなら、ウチでは雇用しません」と判断しているわけです。

それはそれでいいのです。

そして実際に「じゃあ、入りません」なり「じゃあ、辞めます」と言って若手が減っていくわけです。

もしもそれが困る、というのであれば、企業は対策を立てなければなりません。 

 

 

ダイバーシティの本質とは

あえて「女性管理職を増やすか!」「外国人を採用するか!」などと考えなくても、すでに従業員のライフスタイルは多様化しているのです。

 しかしそれは「選択肢が増えた」ということではなく

「結婚して家のローンを組み、子供を育て、老後は年金と退職金で暮らす」

という生活が普通ではなくなった、ということにほかなりません。

日本経済が停滞し、企業が昔のように「夫一人の給料で家族を養える」だけの給料を提供できない以上、人々のライフスタイルが変わっていくのは当然のことです。

 

ダイバーシティの本質とは、このような「従業員のライフスタイルの変化」に対応していくことだと言えます。

(続く)