スライドを作るコツはまず○○をすること! その2

スライド作りで迷路に入ってしまい、偶然通りかかった総務のイノウエさんにアドバイスを求めた新卒2年目のミヤケさん。

具体的なアドバイスをしてくれると思ったら、イノウエさんは

「ミヤケさんはこのスライドで何を伝えたいですか?」

などと言い出したのでした。

 

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いいスライドには「ゴール」がある

イノウエ

「いいスライド、っていうかそもそもいい提案書には必ず先にゴールがあると思うんですよ」

ミヤケ

ゴール…ですか…?」

 

きょとんとするミヤケさんにイノウエさんは

「ミヤケさんが作ったスライドを印刷してほしい」

と頼みました。

モニターで見ればいいじゃん、おじさんって必ず

「紙で出して!」

って言うのよね…と心の中で思いながら、ミヤケさんは4枚だけしかできていないスライドを印刷します。

 

ミヤケさんが印刷したペーパーの1枚目にイノウエさんはボールペンでぐっと円を描きました。

イノウエ

「この、『高齢者向けパソコン教室事業』っていうタイトルですけど」

タイトルからかい! と思いながらミヤケさんは首を傾げます。

ミヤケ

「はい?」

イノウエ

ミヤケさんが思う『高齢者』って幾つぐらいの方ですか?」

ミヤケ

高齢者の年齢…ですか…?」

 

ミヤケさんは言葉に詰まってしまいました。

 

スライドのターゲットは誰なのか?

ミヤケ

「65歳とか…ぐらいですかね。

 パソコンを習って使ってみようっていう方なので」

イノウエ

「じゃあ60歳はターゲットとしては少し若くて、逆に75歳も高齢すぎて対象外ってことでいいですか?」

ミヤケ

「そうはっきり言われると…でもまぁ、それぐらいのイメージです」

 

ミヤケさん、とイノウエさんはまた少し厳しい目をしました。

イノウエ

「ぼくの父は73歳です。

 でもまだ経理の仕事をしていてバンバンPCを使ってます

 妻の父もPCでインターネットしてます。

 これって特殊なケースだと思います?」

ミヤケ

「…どうでしょう」

イノウエ

「ミヤケさんのおじいちゃんおばあちゃんって80過ぎぐらいじゃないですか?

 パソコンしたがりません?

 

言われてミヤケさんは黙り込んでしまいました。

確かに父方・母方問わずおじいちゃんもおばあちゃんも、PCで買い物をしたがったりインターネットができたら便利だろうなと言ったりします。

 

イノウエ

「逆に、先代の専務、今は相談役になってますけど会長の弟さん。

 この方はまだ65歳ですけど、パソコン触ってるの見たことあります?

ミヤケ

「…ないです…」

 

確かに相談役はPCをほとんど使いません。

この方は特にPCが苦手そうではあるのですが、少なくとも身近にいる人がターゲットとしては対象外なのです。

 

イノウエ

「ミヤケさん、このスライドって誰のために作ってます?

 

誰のためにスライドを作るのか?

唐突に聞かれてミヤケさんは面食らってしまいました。

気を取り直して

「社長に指示をもらったので、社長のために作ってます」

と答えましたが、イノウエさんは難しい顔をしました。

 

イノウエ

社長に言われたからその通りに作るのが提案書ですか?」

ミヤケ

「…じゃあ、スライドは誰のために作るんですか?」

 

ミヤケさんの問いにイノウエさんは笑顔を見せました。

 

イノウエ

スライドのターゲット、ミヤケさんが作ったスライドで言えば高齢者向けパソコン教室に通ってくださる方のためです」

ミヤケ

「それは…」

言葉に詰まったミヤケさんにイノウエさんは軽くうなずきます。

 

イノウエ

ターゲットであるお客さまが、スライドを直接見るわけではない

 そう言いたいんですよね?」

ミヤケ

「…はい」

イノウエ

「気持ちは分かります。

 でも考えてみてください。

 ミヤケさんが想定した年齢のターゲットは周りにいませんでしたよね?

 社長に言われたからと言って、存在しないターゲットに向けて作ったスライドには何の意味もありません

  大切なのは実際にいる人、実際に使ってくれる人を想定してスライドを作ることです」

 

綺麗ごとに聞こえますか? とイノウエさんは尋ねました。

はい、とは言えずミヤケさんは苦笑いをします。

そうでしょうね、とイノウエさんはうなずきました。

(続く)

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